マンション建築と近隣紛争(特に日照妨害)/不動産・土地・建物・借地・借家・マンション法律相談室/弁護士法人アスタスク法律事務所(神戸)

 

第1 近隣紛争の種類


マンションの建築は,近隣住民の生活に対し,様々な影響などを及ぼします。
①騒音,振動,地盤沈下など,近隣住民の支配範囲に侵入して被害を生じさせるもの,②日照妨害,眺望妨害,通風妨害など,近隣住民が隣地の空間を利用して従来受けていた利益を失わせるもの,があります。

 

 

第2 日照妨害について

 

1 近隣紛争への対処法


近隣紛争への対処の場面としては,直接交渉,調停,裁判があるほか,近隣紛争は建築行政と密接に関連するので,地方自治体によっては,条例や指導要綱で,近隣紛争の予防及び調停の制度を設けているところがあります。その内容は,第1に,紛争の予防のための建築計画の事前公開制度として,①「建築計画のお知らせ」という標識の設置,②近隣住民に対する建築計画の内容の説明があり,第2に,紛争発生後の建築紛争の調整制度があります。
しかし,その具体的対象・手続(標識設置の対象建築物,近隣住民の範囲,紛争調整の申出手続や調整方法など)は,自治体によって様々であるうえ,一定の限界があり,また,いずれにせよ強制的に紛争を解決するものではありません(紛争当事者が同意しなければ,紛争は解決しません)。

 

2 マンション完成前(着工前ないし着工後)の対処

 

(1) 近隣住民側からの建築工事差止請求


近隣住民としては,日照妨害が発生しないように,マンションの全部または一部の建築を止めさせて設計変更してもらうのが最良です。
そのために,建築主と交渉しても合意に至らないときは,裁判所の仮処分の手続で,仮に建築工事を差し止めるよう請求する必要があります。通常の訴訟手続では,判決前に,マンションが完成してしまうからです。
隣地に建物が建築されることにより生じる日照妨害は,人が社会生活を営む以上不可避に生じるもので,相互受忍を必要とするものですから,その受忍すべき限界(=「受忍限度」といいます)を超える場合に限り,「仮に建築工事を差し止める」請求が認められます。

 


→ いかなる場合に受忍限度を超えると判断されるのでしょうか

 


① 日照規制違反の有無
建築基準法は,建築物が隣接地に対し一定時間以上の日影を生じさせてはならないという規制(いわゆる日影規制)を定めています。
建築物が日影規制に適合するものであるか否かは,受忍限度内か否かを判断するうえで考慮されるべき重要な要素とされています。
ただし,日影規制は一応の社会的基準として画一的処理のために設けられたものですから,建築物が日影規制対象外のものであっても,その建築物から生じる日照被害を被害者において当然受忍すべきものと即断することはできず,受忍限度内か否かは個別具体的な被害の状況などを勘案して判断すべきで,当該建築物が日影規制対象外であることは,その際の1つの重要な判断資料と考えるのが相当,とされています。


② 地域性
日照保護の必要性は地域によって異なります。
一般的には,日照の保護の必要性は,(Ⅰ)第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域,(Ⅱ)第1種中層住居専用地域・第2種中層住居専用地域,(Ⅲ)第1種住居地域・第2種住居地域・準住居地域,(Ⅳ)近隣商業地域・準工業地域,の順で小さくなり,商業地域・工業地域は最も少ないとされています。
ただし,地域性は,行政による上記用途地域の指定だけで判断するのではなく,現実の土地使用状況や予測しうる将来の使用状況をも考慮して判断されます。


③  被害の程度
被害測定時間基準は,通常,冬至を基準日として,午前8時から午後4時までを基準の時間帯とします。
被害測定場所的基準は,建築基準法の日影規制では,一般的な規制として,各建物が南側に5mの空き地を持っていることを前提に,第1種低層住居専用地域及び第2種低層住居専用地域では1階の窓の中央(1.5m)の高さで相当の日照を受け,その他の地域では2階の窓の中央(4m)の高さで相当の日照を受けるという想定で規制しています。
しかし,民事裁判では,具体的に被害を受ける近隣住民が生活する建物の主要開口部を基準とすることが多いです。

 

 

④ 被害の回避可能性と加害の回避可能性
被害者側で,例えば,敷地の南側境界線に近づけて建物が建てられている場合や,建物のほとんどが2階建て以上である地域において,被害者の建物が平屋である場合は,被害者側も南側を空けることや,建物を2階建てにすることにより,被害を回避ないし縮小する可能性があるので,差止を請求する側にとってマイナスの要素となりえます。
一方,建築主のマンション敷地の南側に空き地がある場合は,配置設計変更により日照妨害を回避ないし減少する可能性があるので,差止を請求する側にとってプラスの要素となりえます。


⑤ 加害建物と被害建物の用途
加害建物がマンションのような営利目的であることは,学校などの公共用建物の場合に比べて,差止を請求する側にとって多少はマイナスの要素となるとされています。
被害建物が住居であることは,被害建物が事務所や店舗である場合と比べて,差止を請求する側にとってプラスの要素となりえます。

 

 

⑥ 交渉経過
近隣住民が建築主に対して日照妨害についての交渉を求めているのに,建築主がこれに応ぜず工事を開始・進行した場合は,差止請求をする側にとってプラスのよそとなりえます。
逆に,建築主が近隣住民に事前に十分な説明をし,かつ,和解交渉に誠意をもって対応し,ほかの多くの住民との間で和解している場合は,一部の住民が差止請求をしても,上記事情は差止請求をする側にとってマイナスの要素となりえます。

 

 

⑦ まとめ
以上のように,特に日影規制違反の有無,被害の程度,地域性を中心として,その他の要素などを総合的に考慮して,受忍限度を超えるか否か,差止を認めるか否かが判断されます。紛争が生じた場合,それぞれの事案に近い裁判例を見つけ,上記判断要素について紛争となっている事案と裁判例とを比較してどのようなプラス・マイナスの要素があるかを検討することにより,具体的な見通しを立てることになります。

 

 

(2) 建築主側からの建築工事妨害禁止請求

 


近隣住民側が,日照妨害をもたらすマンション建築に対し,座り込みなどの実力で建設機械の搬入を阻止するなどにより,法的手続によらず物理的に建築工事を妨害することがあります。
このような場合,建築主は,妨害行為をした住民に対し,建築工事を行うにつき妨害行為をしてはならないと命じる仮処分を裁判所に求めることができます。
まず,禁止の対象となるのは妨害行為ですが,建築現場で集団で工事をやめるよう要求しても,「平和的な説得の範囲」を超えないものである限り,妨害行為には該当しません。「平和的な説得の範囲」を超えて実力で妨害する行為については,妨害の対象である建築の違法性の有無=受忍限度を超える日照阻害をもたらすものか否かにより,禁止の可否が異なります。
受忍限度を超えない,すなわち,適法な建築の場合は,実力で建築を妨害する行為は禁止されます。
しかし,受忍限度を超える,すなわち,違法な建築の場合は,どんな妨害行為でも認められるというものではありません。法治国家においては自力救済は原則禁止されていますので,妨害行為の内容・程度によっては妨害行為が違法にならないものがある,ということになります。

 

 

(3) 建築主側からのビラ・看板撤去請求

 


近隣住民側が,マンション建築工事を間接的に妨害するために,建築主の名誉を毀損するようなビラ・看板を掲示したりすることがあります。この場合,建築主は,ビラなどの撤去を求めて仮処分を申し立てることができます。
ビラ・看板に書いている内容,掲示場所,掲示数などが判断要素となります。

 

 

(4) 建築主側からの損害賠償請求

 


建築主は,マンション建築に対する違法な妨害行為や違法な名誉毀損行為について,住民に対し不法行為による損害賠償を請求することができます。

 

 

(5) 建築主・建築業者側からの刑事告訴

 


住民側の妨害行為において,建築主または建築業者に対し,暴行・脅迫・傷害・名誉毀損が行われたり,建築業者に対して威力を用いて(実力行使して)工事妨害が行われた場合には,建築主・建築業者は,当該行為者を刑事告訴することができます。

 

 

3 マンション完成後の対処

 


(1) 近隣住民側からの損害賠償請求

 


近隣住民がマンション建築により日照を妨害されて被害を受けたときは,建築主に対し,不法行為による損害賠償請求をすることができます。日照妨害が受忍限度を超えているか否かなどにより判断されます。

 

 

(2) 近隣住民側からの建物撤去請求

 

 

日照阻害をもたらすマンション建築が完成した後に,近隣住民が日照を取り戻すために,建築主に対し,当該マンションの一部撤去を請求することがあります。
一部撤去請求が認められるのは,損害賠償請求や差止請求が認められる場合よりも強い違法性がある場合(受忍限度を著しく超える場合)に限定されます。

 

 

 

 

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