契約期間中のトラブル/不動産・土地・建物・借地・借家・マンション法律相談室/弁護士法人アスタスク法律事務所(神戸)

 

Q 私は他人にマンションの1室を貸しています。建物賃貸借契約書に「賃借家屋内において,犬・猫など動物類の飼育を全面的に禁止する。違反した場合契約を解除する。」という条項が入っているにもかかわらず,賃借人(借家人)が,犬を飼っていることがわかりました。この場合,賃貸借契約を解除することができるのでしょうか。


A ペット飼育禁止条項に違反してペットを飼育していること「のみ」を理由に賃貸借契約を解除できるかについては,裁判例がわかれています。
ペット飼育禁止条項に違反してペットを飼っていることに加え,「実際にそのペットのため室内や廊下などが汚れ,その鳴き声などのために隣室などの住民に迷惑を及ぼしている事情」などがあれば,そのことも考慮して,賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されるに至ったとして,契約の解除を有効と判断した裁判例があります。
まず,可能であれば,写真などでペットを飼っていることの証拠を押さえてください。また,可能であれば,苦情を言われている近隣住民がいればその苦情を文書化して,苦情を言っている方の署名押印をもらっておいてください。
そして,「ペットの飼育をやめてください。○日までに飼育をやめない場合は,契約書に記載しているとおり,契約を解除します。」旨の警告を配達証明付内容証明郵便で行います。
それでも賃借人が応じなければ,裁判をすることになります。その際に,「上述の証拠」が重要な意味をもってきます。

 

 

Q 私は他人にマンションの1室を貸しています。建物賃貸借契約書に「大音響でテレビ・ステレオなどの操作,ピアノなどの演奏を行うことを禁止する。これに違反した場合は,賃貸借契約を解除する。」という条項が入っているのですが,賃借人(借家人)は大きな音でピアノの演奏をし,私は,その賃借人の隣人から苦情を言われました。この場合,賃貸借契約を解除することができるのでしょうか。

 

 

A 生活をしていれば一定の生活騒音を発することはやむを得ないことで,一般に社会生活上受忍(我慢)すべき限度(=「受忍限度」といいます。)を超えている場合に初めて,上記騒音禁止条項に違反しているということができます(多くの裁判例もこのような立場をとっています)。
この受忍限度については,騒音の大きさ・種類,騒音を発する時間帯(日中か夜間,深夜か),その頻度,生活上必要やむを得ない騒音か等の事情を考慮して判断される(最終的には裁判所が判断)ことになります。
そして,賃借人が受忍限度を超えて騒音を出している場合に,賃貸人がその中止を警告した(配達証明付内容証明郵便で行ってください)にもかかわらず,賃借人がこれに従わないときは,賃貸人の賃貸借契約解除が有効となる,と考えられます。

地方公共団体によっては騒音計の貸出制度がありますので,それを利用することも一案です。

 

 

Q マンションの1室を借りているのですが,この3か月間賃料を滞納しています。
先日,マンションに帰ってみると,誰かが立ち入った気配があったので管理会社に確認したところ,「賃借人が賃料を滞納した場合は,賃貸人は賃借人の承諾を得ずに立ち入ることができる。」旨のマンション賃貸借契約書の条項に基づき,カギを開けて立ち入りました,ということでした。
私は,何も文句は言えないのでしょうか。

 


A マンション賃貸借契約書の条項に定めてあっても, 管理会社が賃借人の承諾なしにカギを開けて室内に入ることは,平穏に生活する権利を侵害するので,「法的手続によったのでは権利の実現が不可能または著しく困難である緊急やむを得ない特別な事情」がある場合(極めて例外的な場合)を除き,原則として法律上許されません(不法行為になります)。

 

 

 

 

Q マンションの1室を貸していますが,借主が何か月も家賃を払ってくれません。内容証明郵便も送ったのですが,まったくだめです。早く出ていって欲しいのですが,どうしたら良いでしょうか?

 

 

A 訴訟提起をするのが近道と思われます。
判決になる前に,裁判所で裁判官を介して話し合いをして,例えば「○月○日までに出ていく。その代わり滞納家賃については○円減額する」という形で解決を図ることも可能です。
勝訴判決が確定したのに借主がどうしても出ていかなかったら,判決に基づいて強制執行をしなければなりません。借主の承諾なしに,鍵をかけたり,部屋の中の家財道具などを撤去したりすることは違法です。 

 

 

Q わたしは,マンションを借りています。ベランダの手すりがぐらつき危険な状態となっている(ベランダが使えない状態です)のに,家主は,私の使い方が悪いため手すりが傷んだといって修理してくれません。私の使い方に悪い点はありません。

どうしても家主が修理してくれないのなら,私の方も家賃の支払いを止めてしまおうと思うのですが,法的に問題はないでしょうか。

 

 

A 家主は,家賃を受け取って建物を貸しているのですから,その建物が傷み,借主の使用収益に支障を来しているときは,これを修繕すべき義務を負っています(ただし,修繕が物理的,経済的に不可能なときは除く)。

 

他方,借主は,他人の建物を使用しているので,一般通常人が払うのと同等の注意をもって借家を使用すべき義務があり,当該契約または建物の性質によって定まった方法により借家を使用しなければなりません。従って,借主がこれらの義務に違反して建物を毀損したときは,家主に対しその損害を賠償すべき義務を負います。

 

ご質問の件ですが,あなた(借主)に損傷発生について責任がないのでしたら,家主は手すりを修繕すべき義務があります。

そして,家主が修繕を拒否したために,借主が契約目的に従った建物の使用を全くできなかったときは,借主は使用できなかった期間について家賃の支払義務を免れます(裁判例)。しかし,本件は手すりの損傷により使用できなかった部分は建物のうち2階ベランダ部分のみですから,家賃全額の支払いを拒否することはできません。

そこで,使用できなかった借家部分の割合に応じて,家賃の一部の支払を拒絶できるかが問題となります。

一部の支払を拒絶できるとする考え方もあるのですが,裁判例の中には,使用に及ぼす障害の程度が借家の一部にすぎないときは,借主は,当然には家賃の一部についても支払を拒絶しうるものではない,とするものがあります。

従って,ご質問のケースの場合,家賃の一部について支払拒絶するという方法をとると,家主から家賃の不払を理由に契約の解除をされる可能性があります。

家主が修繕義務を果たさないとき,借主が自ら修繕し,その費用を家主に請求することができます。従って,手すりの損傷原因に関する証拠(写真など)を保存した上で,早期に自ら修繕してしまう(修理代は家主に請求する)のが,おすすめの解決策ということになります。

 

<ご参考に>

 

家主は,借主との間で修繕義務を免れる特約を結ぶことができ,「修繕費用については借家人が負担する」との特約がなされている契約が多くあります。
このような特約がある場合,家主の修繕義務を免除しただけのもの(この場合は,修繕するか否かは借主の自由な選択となります)か,あるいは,借主に修繕義務をも課したものか,が問題となります。

この点契約書上不明でしたら,よく確認をする必要があります。

 

特約で,借主に修繕義務をも課している場合の修理義務の範囲について~東京地方裁判所  昭和61年7月28日判決

「一般に,賃貸人は賃借人に対し,賃借物を賃貸借の目的に適つた状態で使用収益させる義務及び必要な修繕をする義務を負担しているところ,特約により賃借人が賃借物を修繕する義務を負担することは差支えないが,特約による賃借人が負担する義務の内容は,通常生ずる破損の補修,すなわち,いわゆる小修繕であり,賃借物の大修理,大修繕は含まれず,ましてや通常予想できないような天災等による甚大な被害に対する修繕は含まれないものと解するのが相当である。」

 

 

 

 

Q 私はマンションの1室を他人に貸していますが,賃借人が無断で転貸しています。契約を解除することはできるでしょうか。

 

 

A 賃借物の転貸には賃貸人の承諾が必要で,賃貸人の承諾を得ない無断転貸により賃借人が第三者に賃借物の使用収益をさせたときは,賃貸人は賃借人との賃貸借契約を解除することができます。

ただし,無断転貸が「賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情」がある場合は,解除権は発生しません(最高裁判決)。

 

「背信行為と認めるに足りない特段の事情」があるか否かについては,個別具体的な事案ごとにいろいろな事情を総合して判断されます。

 

① 義務違反の軽微性~転貸が一時的であるなど

② 賃借人と転借人の関係,使用状況の変化~賃借人と転借人が親子など親族その他の特殊関係にあるなど

③ 転貸借の非営利性~転貸の賃料がわずかであるなど 

 

 

Q  私は,マンションの1室を賃借していますが,契約期間中にマンションの所有者がかわりました。新所有者から,新所有者との間で改めて賃貸借契約を締結し直す旨の申し入れがありました。新所有者は,賃料を現行の倍に増額することを新契約の条件とし,これに応じなければ退去して欲しいと迫ってきました。

私は,そのままこのマンションに住みたいのですが,新所有者の提示した条件で賃貸借契約を締結し直さなければならないのでしょうか。

 

 

A 賃貸借契約の期間中に建物が売却された場合,原則として賃貸人の地位は新所有者に移転し,賃貸借契約は新所有者にそのまま引き継がれますので,所有者がかわったからといって新所有者との間で賃貸借契約を締結し直す必要はありません。新所有者の要求を拒否しても,退去する必要はなく,従前の契約条件でマンションに住むことができます。

 

 

 

 

 

 

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